2007年にアドネットワークの事業会社として設立されたアイモバイル。設立以来、Webサイトやアプリのパブリッシャーに、Googleプロダクトコンサルティングとソリューションを提供してきました。その数はなんと約1,100件。この実績は業界最高峰といって過言ではないでしょう。
2016年からGoogleが提供する招待制のプロダクト・DoubleClick Ad Exchangeアプリ内広告の取り扱いを開始し、パブリッシャーの広告収益を最大化するため支援しています。
2019年には、収益実績に加えテクニカル、ポリシー対応などの面も高く評価され、国内のアドネットワーク事業者として初めて「サイト運営者向けGoogle認定パートナー」となりました。また、2020年に2度実施された「2020年度の顧客満足度調査」では2回とも国内で1位を受賞。
そして2021年11月、Google主催のGCPP Summitにて「Highest Health Score」を満点で受賞しました。受賞は世界で3社のみ、国内事業者ではアイモバイルが初の受賞となります。
今回は、そんな広告マネタイズのプロフェッショナルに、WebサイトやアプリにおけるGoogle アド マネージャーの運用法や広告事業者との向き合い方について聞きました。
GAMは広告収益を得るための必須プロダクト
2019年、株式会社アイモバイルに入社。事業企画本部コンテンツ事業部にてIPを利用したアプリ開発の提案営業を行う。その後、メディアソリューション事業本部へ異動。BtoB向け、ビジネス系、女性向けなどのWebサイトやアプリのパブリッシャーを50社以上担当し収益改善へ導く。現在は部署広報・PRも担当し、Twitter運営やプレスリリース作成なども行う。
Twitterアカウント:https://twitter.com/MSPR_imobile
ー:Webサイトやアプリを運営していれば、必ず広告による収益獲得に取り組まれていると思います。そのためにGoogle アド マネージャー(GAM)を使っているケースがほとんどだと思いますが、Google アド マネージャーとはどんなプロダクトですか?
櫻井氏:Googleアドマネージャーは、Googleが提供しているプロダクトです。コンテンツを利用するユーザーに広告を表示して、収益を拡大しつつブランドイメージも保護できる包括的なプラットフォームです。
収益を向上させるため、さまざまなな広告フォーマットの配信、収益の一元管理、データ分析や活用、パブリッシャーさまの掲載基準に沿った管理設定でブランド保護といったプラットフォーム機能の他にも弊社のようなサイト運営者向けGoogle認定パートナーから招待を受けて利用できるGoogle アド マネージャーの機能・Google AdExchange(AdX)というものもあります。
ー:Google AdSenseとの違いは何ですか?
櫻井氏:Google アド マネージャーは、純広告のような「優先取引」や「プライベートオークション(PMP)」が利用できるため、特定の購入者をオークションへ招待でき販売できます。他にも細かいフィルタとブロックが可能で、カテゴリや広告主など細かい設定や、ブロックルールの組み合わせによるフィルタ機能も実装されています。
「購入者 / 広告主」の部分でもGoogle AdSenseとの違いがあり、Google広告の広告主だけではなく、Google アド マネージャーの購入者(Google認定ベンダー)の広告主案件が配信されます。そのため、配信される広告主数が多いのでオークションプレッシャー(※1)が掛かり、収益性が上がる可能性があります。
※1 オークションプレッシャー:広告を表示するために、複数の広告主が価格を競っていること
ー:どういったパブリッシャーにGoogle AdExchange(AdX)を提案しているのでしょうか?
櫻井氏:どのパブリッシャーさまもGoogle AdSenseを利用されているケースがほとんどですので、Google AdSenseの収益状況を確認して、もっと収益が上げられそうなパブリッシャーさまへGoogle AdExchangeを提案しています。
AdXを導入し広告収益160%改善
ー:御社に広告運用を依頼した場合、運用はどのように進んでいくのでしょうか?
櫻井氏:まずはパブリッシャーさまの現状を確認します。その結果、弊社が広告枠を管理しても今以上に広告収益が上がらないと考えられる場合は、無理に収益改善の提案はせず、コンテンツやUIに関する改善を提案することで、収益拡大に貢献できるよう努めています。改善の余地がある場合は「サイト運営者向けGoogle認定パートナー」としてGoogle アド マネージャー(AdX)を活用し、収益を最大化できるよう運用します。
具体的には、弊社でGoogle アド マネージャー(AdX)の配信や、ヘッダービディング(※2)の導入とサポート、ダイナミックアロケーション(※3)を活用しフロアプライス(※4)を設定し、他広告プロダクトを配信しオークションプレッシャーを掛けCPMを上げていきます。
この運用も、弊社では手動の運用ではなく独自ソリューションを活用して自動化することで、高頻度かつ最適な運用をし、収益の底上げに成功しています。また、広告収益改善の延長で、広告配信やその運用だけではなく、コンテンツのUI、UXの改善提案をする場合もあります。例えば回遊率を上げるための提案や不要な広告タグの削除などをし、コンテンツを読みやすくすることでユーザー体験の向上を狙います。
※2 ヘッダービディング:パブリッシャーが複数の広告事業者に対して同時にリクエストを送り、最も単価の高い広告を表示する仕組み
※3 ダイナミックアロケーション:AdXで提供している、広告枠オークションへの参加方法
※4 フロアプライス:広告配信における最低落札額
ー:これまで担当されてきたパブリッシャーの中で、収益が上がっていなかった事例があれば教えてください。
櫻井氏:2つの事例をご紹介します。
櫻井氏:まず1つ目の事例は、運用面に課題があったパブリッシャーさまです。1つの広告プロダクトのみで運用されていたので、フィルレート(※5)が100%ではなくimpが欠損していました。そこで弊社のAdXを導入し、さらにフィラー(※6)の広告プロダクトを追加接続することでimpが130%、広告収益が160%改善しました。
※5 フィルレート:広告枠在庫に対する広告の埋まり具合の割合
※6 フィラー:広告枠が落札されなかった際に配信される広告
ー:改善までに費やした期間はどれくらいだったのでしょうか?
櫻井氏:ご紹介した事例の場合は約3ヶ月です。当然パブリッシャーさまの状況によるのでケースバイケースではあります。
ー:もう1つの事例もお願いいたします。
櫻井氏:2つ目の事例は、すでに他社のGoogleパートナーを利用していたのですが、こちらも運用面に課題があり収益が最大化されていませんでした。おそらく、Googleパートナーとのコミュニケーションが適切ではなかったのではないかと考えられます。
弊社が担当してから、まずは弊社のAdX(GAM)を導入し運用することでCPMが140%改善しました。改善の要因は、広告サイズの最適化やヘッダービディングの接続、コンテンツ改修はもちろん、弊社は国内外問わず、数多くの広告ネットワークと契約しているので、どのネットワークがパブリッシャーさまに合っているか選定もします。さらに運用も手動と自動を場面によって使い分けているので、結果として改善したと思います。
ー:御社のAdX(GAM)に変更する以外にもさまざまな改善があったのですね!ちなみにネットワークの選定はどのように行っているのでしょうか?
櫻井氏:自動ではなく手動で選定しています。選定方法ですが、まずはパブリッシャーさまにヒアリングをし、その上で弊社にあるナレッジを活かしています。そのため、コミュニケーションは非常に大切にしています。
ー:一度、改善が終われば御社の役割も終わるのでしょうか?
櫻井氏:終わらないんです。パブリッシャーさまの社内に運用できるリソースやナレッジがあれば、弊社から社内に運用を切り替えていただけるとは思います。ですが、複数のネットワークと契約し社内で設定して運用するのは工数的に難しいのではと思います。
また、弊社はもちろん広告事業社であれば、直近のトレンドや市場動向、新しい機能の情報もあります。ですので、こういった情報を加味しながら、さらなる改善が見込めると考えています。
運用の内製化への課題はリソースではなくナレッジ
ー:パブリッシャーが広告運用を内製化するまでの目安やするための課題を教えてください。
櫻井氏:パブリッシャーさまの運営体制やプロダクトの規模、内製の定義にもよりますが、内製化自体はできると思います。ただ、月間で億PVの大手パブリッシャーさまでも全て内製化し自社のみで完結しているケースはほぼ無いと思います。
ー:内製化できない背景には何があると思われますか?
櫻井氏:まず、1つの広告プロダクトだけを利用するより、複数の広告プロダクトを設定しオークションプレッシャーを掛け収益を上げていく運用が必要です。
広告市場の時期トレンドといった収益性の波や、自社プロダクトと各広告プロダクトの相性もあるため選定が難しいこと、さらに「適切なタイミングで適切な設定をする」というのが非常に難しいです。
こういった広告プロダクトの選定と運用、パフォーマンスの管理をし、他にもコンテンツ改修のPDCAを回しながら自社でナレッジを貯めていくのは、工数も時間も掛かるので限界があるのではないでしょうか。
ー:ありがとうございます。今のお話を聞いて、運用面以外でも難しい点があると思いました。例えば、Webサイトやアプリのユーザー数がある程度安定していても各ネットワークの収益が月によって変動することがあると思います。この要因はパブリッシャー側で判断や分析ができるのでしょうか?
櫻井氏:トレンドや配信されている案件によって収益性が異なるので、パブリッシャーさま側で判断するのは難しいと思います。弊社は、2007年からアドネットワーク事業を行っており、かつGoogleパートナーなどメディアソリューション事業も展開しているので知見が豊富です。また、現在はGoogleプロダクトだけで月間700以上ものパブリッシャーさまの運用も担当しているので、そういった点からも判断することが可能です。
ー他にパブリッシャー側で判断・対応ができないことはありますか?
櫻井氏:Googleのポリシー違反の発生や「確認クリック」というペナルティですね。
これらは収益にダイレクトに影響があり緊急性が高いことなのですが、対応を調べても分からないことが多いですし、ナレッジがないと解決できないと思います。それにポリシー違反も1つではなく複数ありますので、それをすべて知った上で対応するのは難しいですね。違反やペナルティは通常、Google側から通知が来るのですが、通知が来ないものもあります。通知が来なければおそらく違反していることに気付かないと思います。その代表例が「確認クリック」です。
「確認クリック」はGoogle のシステムによって、サイトの広告で意図しないクリックが発生していると判断された場合に表示されるものです。この状態のときは広告をクリックしても遷移しないんです。クリックした後に確認メッセージが出るので、それをクリックすると遷移するのですが、確認クリックの状態のままではCTRもCPMも大幅に下降します。
パブリッシャーさまにしてみると、CTRやCPMが下がっているものの、その理由がネットワークによるものなのか他の要因なのかが判断できないと思います。
実際に大手パブリッシャーさまから「広告事業者に運用を任せることで、工数削減や自社にはないナレッジやトレンドを得られるし、何かあったら相談できるので、完全な内製化はしていない」とおっしゃっていただきました。
ー内製化するために必要なのは、パブリッシャー側のリソースではなくナレッジということですね。
パブリッシャーに寄り添った運用でサポート
ー:櫻井さんはどんな時にやりがいを感じますか?
櫻井氏:まずはパブリッシャーさまの収益が改善することが嬉しいですね。私もお客さまのプロダクトのことを思って日々運用や改善をしているので、自分ごとのように嬉しいです。
ここまで収益面の話ばかりになってしまいましたが、やはりプロダクトの成長がなくてはなりません。私が担当しているアプリパブリッシャーさまで、開発前からサポートをしてるアプリがあるのですが、日を追うごとにDL数が伸びていき、今では多くのユーザーさまに使っていただけるようになりました。ゼロからそのアプリの成長を見ていたのでとても嬉しく、記念にアイコンをデザインしたケーキを作って送っちゃいました(笑)
ー:最後にパブリッシャーに向けてメッセージをお願いします。
櫻井氏:一番伝えたいのは、私たちは広告マネタイズのプロフェッショナルだということです。ナレッジが豊富にありますし認定パートナーなので最新情報を提供することもできます。
パブリッシャーさまの収益最大化のために尽力させていただくことは当然なのですが、機械的なやりとりや運用ではなく、パブリッシャーさまに寄り添いながら対人としてコミュニケーションをしサポートしていきたいと思ってます。
ー:本日はどうもありがとうございました。